本や人との出会い、さまざまな体験は、人生を豊かにしてくれます。お金は使ったらなくなるし、世の中の状況によって価値が下がることもあります。しかし、本や人との出会い、さまざまな体験から得られた自分の中にある知恵や技術はなくなることはないですし、それぞれが自分の中で繋がることで、新たな価値や選択肢、可能性が産まれます。
マネーバランスの相談もそうですね。単純に答えを求める相談ではなく、マネーバランスドクターとの相談の中で、お客様自身の「ゆたかな人生」に繋がる知恵や技術が増えていきます。結果、人生の選択肢や可能性が広がり、一人一人が思い描く「ゆたかな人生」が実現していきます。大袈裟に聞こえるかもしれませんが、継続してご相談されているお客様で、「以前見えていた世界や自分の人生が、違って見えてきた」とおっしゃる方がいましたがよくわかります。
先日、目に留まったこの風刺画は、「本を読むことの本質」を風刺したものだそうです。人生における知恵や技術と似てますね。本を読むこと、そして思考することで、知識や考え方の幅が広がり、以前とは違った世界に見える(世界は以前と変わっていなくても)。世界が違って見えたときに本を読むことで得られる本質的な意味を実感できるのですね。
今回は、私が最近ハマっている(笑)本、著者をご紹介します。まさに紹介した風刺画のように、私の中で世の中の見え方が変化した本です。言い方を変えると別の角度から見るとこんなに違って見えると気づかせてくれた本です。「お金」に関わることなのでご紹介させていただきますね。
「エンデの遺言 ~根源からお金を問うこと~」です。関連書籍で、「エンデと語る 作品・半生・世界観」も合わせて読みました。とても興味深い内容でした。著者の、ミヒャエル・エンデは、ドイツの児童文学作家で、代表作は、「はてしない物語」「モモ」がありご存じの方も多いかと思います。「モモ」や「はてしない物語」にも込められた、メッセージ、世界観をこの本で読み解くことができます。
「エンデの遺言 ~根源からお金を問うこと~」
第一次世界大戦後のハイパーインフレに苦しんだドイツで成長したエンデは、直感と思考の末に問題の根本は「お金」にあると考えました。「お金の正体」とは何か?たどり着いたこたえは、お金が常に成長を強制する存在であるということです。現状に満足することなく「お金(資本)は成長」を追い求めるのです。成長への強制の理由は時間とともに加算される「利子」。時間がたてばたつほど利子は増えるので、投資されるお金はそれに見合う見返りを求めます。成長を強制する力を更に推進するのが「人間の欲望」で、世界中のあらゆる場所、分野で利潤を求め続けているのが現状です。
「利子」と「人間の欲望」をベースとした資本主義を成立させているものはというと・・・。歴史を振り返ると、植民地からの搾取、労働階級からの搾取、自然からの搾取(天然資源)、現在では第三世界(アフリカなど)からの搾取。日本で生活していると直接目にする機会はなく、実感することができないですね。エチオピアでは、西側諸国からの借金の利子を払うためだけに、自国で産出する食肉をすべて輸出に回さなければならない。結果貧困と飢えは断ち切るこができない構造になっている。企業の経営者も、工場など設備投資のために株式で資本調達し、結果、株主、企業価値の維持のために徹底して利潤を追求するしかない。
自然破壊、環境問題、貧困格差、労働問題・・・世界の解決しない問題が「利子」と「人間の欲望」が産み出した構造に根差している・・・正直ショックでした。自分が資産運用している株や投資信託の利子・配当がどこから生み出されているのか?企業の成長くらいにしか考えが及ばず、それ以上深く考えたこともなかったので、エンデのたどりついた「こたえ」には目から鱗でした。
ちょっと長くなりますが、エンデが注目するスイスの経済学者ビンズヴァンガーの著書を引用していましたのでご紹介します。
紙幣が何をもたらしたのか?ロシアのバイカル湖の湖畔に住む人々の話です。人々は紙幣がその地方に導入されるまで良い生活を送っていたそうです。日により漁の成果は異なるものの、魚を採り自宅や近所の人々の食卓に供していました。毎日採れるだけの量をとっていたのです。それが今日ではバイカル湖の、最後の一匹まで採りつくされてしまいました。どうしてそうなったかというと、ある日、紙幣が導入されたからです。それと一緒に銀行のローンもやってきて、漁師たちは、ローンでもっと大きな船を買い、さらに効果が高い漁法を採用しました。冷凍倉庫が建てられ、採った魚はもっと遠くまで運搬できるようになりました。そのために対岸の漁師たちも競って、さらに大きな船を買い、さらに効果が高い漁法を使い、魚を早く、たくさん採ることに努めたのです。ローンを利子付きで返すためだけでもそうせざるをえませんでした。そのため、今日では湖に魚はいなくなりました。競争に勝つためには、相手より、より早く、より多くの魚を採らなくてはなりません。しかし、湖は誰のものでもありませんから、魚が一匹もいなくなっても誰も責任を感じません。近代経済、貨幣経済が自然資源と調和していないことがよくわかります。
私も、魚を買います。野菜を買います。日用品も買います。資産運用もしています。仕事をしています。現在の資本主義、貨幣経済の中で大きな仕組みの一部としてなんとか生き抜くために頑張っています。この本には、では我々はどうすればいいのか?という疑問に対する、エンデ他、経済学者の答えも書かれてあります。
「老化するお金」「時とともに減価するお金」・・・お金の常識をひっくり返す考え方や、そういった考えをベースに欧米に広がる地域通貨の試みなども書かれてあります。SDGs、持続可能な社会を実現するために本質的な部分から考えることが実現につながるように思います。目から鱗、腑に落ちまくりました(笑)興味があれば是非読んでみてください。
私自身、「知らないこと」を知らない・・・そんなことはたくさんあります。今回出会ったこの本のように、自分が見る世界が違って見える経験をすると本を読んだり、人と会ったり、いろいろな体験をしたり・・・そんなことに自分の時間を使いながら生活を楽しみたいと改めて思いました。それを考えると、マネーバランスの相談を継続、実践の積み重ねは、自分自身の経験上、人生を「ゆたか」なものにしてくれますね。私もマネーバランスドクターとして貢献できるよう頑張りたいと思います。